メディアベッドを利用したアクアポニックスを知る

今回はアクアポニックスの栽培方法の一つ、メディアベッドについて解説していきます。メディアベッドは多くの小型システムで採用される代表的なアクアポニックスの栽培方法です。設備構成がシンプルでDIYにもオススメです。初心者にも利用しやすい栽培方法ですので、初めての方はメディアベッドの利用を提案しています。それでは解説していきます。

目次

メディアベッドを利用したアクアポニックス

メディアベッドとは

メディアベッドはメディアと呼ばれる培地を利用したアクアポニックスで、小規模なアクアポニックスで最も利用されている栽培方法です。メディアベッドはフィルターを設置する必要がないため、シンプルな構造となっています。

メディアには3つの役割があります。

  • 植物の根を支える役割
  • 魚のフンをキャッチする物理フィルターとしての役割
  • 微生物を増やし魚のフンを分解する生物フィルターとしての役割

この3つの役割があることによってメディアベッドはシンプルな構造でありながらアクアポニックスとして機能します。

トラブルの少ない栽培システム

こちらは実際のメディアベッド方式を採用したアクアポニックスです。
左の写真はシンプルに水槽、栽培槽、ベッドを支える台、そしてポンプと配管で構成されています。
右の写真のアクアポニックスも栽培システム構成は同じですが、ビオトープのようなデザインがされています。
メディアベッドのアクアポニックスは余計な設備がないため、配管も最低限の資材で済み、水漏れなどのトラブルも少ない栽培方法となっていることから、初心者にもオススメです。

メディアベッドは室内での利用に適している

メディアベッドはシンプルな構造で水槽と栽培槽を上下に配置できることからコンパクトな作りになり、室内でのアクアポニックスにもよく選ばれます。小さいアクアポニックスでも、機能は大きい設備と変わりません。
メディアベッドは手軽に始めやすいアクアポニックスともいえるでしょう。

メディアベッドに使えるメディア(培地)の種類

ではメディアベッドにはどのようなメディアが使えるのか、種類や特徴について紹介していきます。

ハイドロボール

アクアポニックスで一般的に利用されるハイドロボールは、粘土を高温で焼いて発泡させたボール状の人口土です。

軽量で丸いため扱いやすく、ハイドロボールの中が多孔質となっているため微生物を多く繁殖できます。またPHが中性であり、さらに水に培地に含まれた栄養素を放出しないことから、水質に変化を与えません。強度もあるため長期にわたって利用が可能です。価格は少し高価なので、予算に応じて利用しましょう。

溶岩砂利

次は溶岩を細かく砕いた溶岩砂利です。

溶岩は非常に多孔質で表面積が多く軽量な素材です。ハイドロボールと同じく水質に影響をほとんど与えません。アクアポニックスの先進地であるハワイではよく使われているメディアでもあります。自然由来の素材であるため形がバラバラです。そのため少しハイドロボールよりも扱いにくいかもしれません。

瓦チップと砂利

最後に瓦のチップと砂利です。

瓦も多孔質で手に入れやすい素材です。水槽の水質浄化にも利用されたりしますので、実績は申し分ないです。ただ、重量があるので栽培槽の台の強度を大きくする必要があります。また形も丸みを帯びてはいないので少し扱いにくいです。

砂利はホームセンターなどでも手に入り、コストも安いです。しかしながら砂利は多孔質ではなく、重量もあります。水はけがよく培地同士の空間が開いているため根に酸素が届きやすいですが、水をあまり吸い上げないため、水位の設定に注意が必要です。それでも管理の仕方によっては十分活用できます。

メディアを選ぶ際のポイント

メディアを選ぶ際のポイントは次の通りです。

  • PHが中性で不活性

水質に影響を与え、アルカリや酸性に変化させてしまう素材や腐敗するような素材はアクアポニックスのメディアとして向かないので注意が必要です。

  • 排水性がよい

水を貯える素材は水の循環を悪くするため、メディアにはあまり向きません。

  • 強度があり、素手で扱えるような素材

軽石のように使用している間に壊れてしまうものは向きません。
また、角が鋭利なものや、繊維質で手を傷つけるような素材も使用するのはやめておきましょう。

  • 多孔質でも目が細かすぎない素材

目が詰まっている素材では、魚の排泄物が溜まってくると水があふれる原因になります。
また水が通りにくくなると、水の中の酸素が少なくなることがあります。サイフォンを利用しても水が抜けにくくなりますので、メディア同士に隙間ができ、空気と水が通るような素材を利用しましょう。

  • 費用対効果の高い

アクアポニックスのサイズによっては10L~数1000Lとかなりの量を利用します。規模が大きくなるほど材料のコストや運送費が増していきますので、メディアを選ぶ際には値段も注意しましょう。複数種類のメディアを混ぜることも可能ですので、予算に応じて組合せもできます。

  • できるだけ軽量

メディアベッドの栽培方式は栽培槽と水槽の高低差を利用して水を循環させます。
そのためメディアが重くなると栽培槽の台の強度を大きくせねばならず、台にかかる費用も増えてしまいます。
メディアの重量も大事な指標です。

メディアベッドを利用するメリット・デメリット

ここまで紹介してきたメディアベッドのアクアポニックスはどのようなメリット、デメリットがあるでしょうか。

まずメディアベッドを利用するメリットを紹介していきます。

メディアベッドのメリット

  • 栽培システムを小型化しやすい

先ほども紹介しましたが、メディアは野菜を支える役目に加え、魚のフンを除去、分解する役割があります。
そのためフィルターを外部に設ける必要がなく、水槽の上に栽培槽を設けて構築できます。アクアポニックスを小型化しやすいので、室内栽培にも向いています。

  • 幅広い種類の野菜を栽培できる

葉物の野菜やハーブはもちろんですが、カブやニンニクなどメディアベッドの水位をコントロールすれば、根菜も育てられます。また果樹や実物野菜の栽培にもメディアベッドは適しています。

  • DIYで作りやすい

ホームセンターなどで手に入る資材で簡単にDIYできます。難しい技術も必要ありません。

  • 消耗品は循環ポンプだけ

メディアベッドを構成する材料は水槽、栽培槽となるコンテナ、メディア、栽培槽の台、ポンプ、配管です。
メディアは交換する必要はなく使い続けられ、コンテナや台は丈夫なものを選択すれば長きにわたって利用できます。ただしポンプは消耗品です。長く使っているとどうしてもパワーが落ちてきます。ポンプを選ぶ際にはギリギリの性能ではなく、すこし機能的に余裕を持ったものを選択すると長く利用できます。

メディアベッドのデメリット

メディアベッドのデメリットは次のようなことがあげられます↓

  • メディア(培地)の重量がある(架台の強度が必要)

栽培槽に20~30cm程の深さまで投入したメディアに水の重量も加わるため、支える架台はそれなりの強度が求められます。台が弱いと野菜を植えるなどの作業時に台が壊れて怪我する危険性もあるため、十分な強度を確保しましょう。

  • 魚が多くなるとメディアにフンがたまりやすい

小さい水槽で、小さな魚を飼育する分には問題になることは少ないですが、ある程度の大きさの魚を飼育し始めるとフンを微生物が分解するスピードよりも、メディアベッドに溜まるスピードの方が速くなります。
あまりにもメディアベッドに溜まりすぎてしまう場合には洗浄するなどのメンテナンスが必要です。

  • 大規模な設備には向かない

規模が大きくなればなるほど、大量のメディアが必要になり、設備投資のコストがDWCやNFTといった栽培方式よりも高くなります。メディアベッドは小規模な農場や家庭用に利用することに向いていると言えます。

  • 水が蒸発しやすい

メディアは日光にあたると熱を持ちやすく、DWCやNFTと比べて、水が蒸発しやすくなります。夏場は特に注意が必要ですが、植物でメディアを遮光することでメディアが熱を持ちにくくすることができます。

まとめ

では最後に今回のまとめです。

  • メディアベッドはフィルターを追加する必要がなくシンプルな構造で、室内にも設置しやすいです。
  • メディアにはハイドロボールにこだわる必要はなく、様々な素材が使えますが、材料によって向き不向きなどがあります。
  • メディアベッドでは葉物野菜だけでなく実をつける野菜や果樹、根菜も栽培できます。

アクアポニックスを始めてみたい、農業として取り組んでみたいという方は、まずこのメディアベッドでアクアポニックスの仕組みと運用方法について練習することを提案しています。ぜひDIYで材料を選ぶところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

駐車場1台分のスペースから始められる”まちかどアクアポニックス”

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アクアポニックスを自宅で始めたい、兼業農業を始めたい、新規事業として取り組みたい、教育にアクアポニックス取り入れたい、自給自足にー。

まちかどアクアポニックスは駐車場1台分、わずか10㎡の広さで野菜を1000株、魚を200匹飼育できる省スペース高効率栽培が可能なトータルシステムです。温室、水槽、栽培槽、フィルター、環境モニタリングシステムがオールインワンとなっています。

葉物野菜やハーブ、実をつける野菜など育てられる野菜は無数にあり、多品目の栽培も可能です。

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